ショートショート

一休


 その一

「これ、一休」
「なんでしょう。和尚様」
「わしはこれから出かけるが、この壷を開けてはいかんぞ」
「どうしてですか?」
「この中身はな、猛毒なのじゃ。口にすればたちまち死んでしまうぞ」

「和尚様、あんなことを言っていたけれど、どうせおいしいものでも隠しているに違いない」
 パクリ
「・・・うっ」
 ブルブルブルブル・・・
 ばったり

 壷の中身は本当に猛毒でした。


 そのニ

「これ、一休」
「なんでしょう。和尚様」
「わしはこれから出かけるが、この壷を開けてはいかんぞ」
「どうしてですか?」
「この中身はな、猛毒なのじゃ。口にすればたちまち死んでしまうぞ」

「ただいま帰ったぞ、一休」
「うーっぷ」
「な、どうした。一休!これはどうしたのじゃ」
「けっ、壷の中身はもう全部いただいちまったよ。だからどうした!」

 一休さんは開き直ってしまいました。


 その三

「これ、一休」
「なんでしょう。和尚様」
「わしはこれから出かけるが、この壷を開けてはいかんぞ」
「どうしてですか?」
「この中身はな、猛毒なのじゃ。口にすればたちまち死んでしまうぞ」

「和尚様は猛毒なんていっていたけど、本当はうまいものに違いない。少しずつこっそり食べてしまえ」

 本当にこっそり少しずつ食べていたので、和尚様にも気がつかれませんでした。


 その四

「これ、一休」
「なんでしょう。和尚様」
「わしはこれから出かけるが、この壷を開けてはいかんぞ」
「どうしてですか?」
「この中身はな、猛毒なのじゃ。口にすればたちまち死んでしまうぞ」

「和尚様は猛毒なんていっていたけど、本当はうまいものに違いない。少しずつこっそり食べてしまえ」
 ぱくり
「…うっわ。微妙な味だよ、これ…」

 毒でも薬でもなく、うまくもまずくもない、微妙なモノでした。


 その五

「これ、一休」
「なんでしょう。和尚様」
「わしはこれから出かけるが、この壷を開けてはいかんぞ」
「どうしてですか?」
「この中身はな、猛毒なのじゃ。口にすればたちまち死んでしまうぞ」

「和尚様の言いつけはきちんと守らなくてはいけないね」

 一休さんは壺の中身を確かめようともしませんでした。


 その六

「これ、一休」
「なんでしょう。和尚様」
「わしはこれから出かけるが、この壷を開けてはいかんぞ」
「どうしてですか?」
「この中身はな、猛毒なのじゃ。口にすればたちまち死んでしまうぞ」

「これ、一休。この壺に描かれておる虎を捕まえてみよ」
「それでは、この壺の中から虎を出してください」

 話が変わってしまいました。


 その七

「これ、一休」
「なんでしょう。和尚様」
「わしはこれから出かけるが、この壷を開けてはいかんぞ」
「どうしてですか?」
「この中身はな、猛毒なのじゃ。口にすればたちまち死んでしまうぞ」

「しかし、本当にこの壺の中には何が入っているのだろう?ちょっと開けてみるくらいならいいだろう」
 ぱかっ
 もくもくもく…
『ははは、とうとう五百年の永い眠りから目覚めたぞ!今度こそこの国を我が物にしてくれよう!!』
「あわわわ」
「い、一休!お前はあの壺の封印を解いてしまったのか」
「和尚様、あれは一体…?」
「この寺は五百年前に王国を荒らしまわった魔王を封じた勇者たちの一人である神官様が建てられたものなのじゃ。そして、あの壺こそ魔王を封じた壺だったのじゃ…」
「そ、そんな!」
「仕方が無い。一休よ、今こそあの魔王を倒してしまわねばならぬ時が来たようじゃ。行け!勇者殿のお力となるのじゃ!!」
 こうして一休は勇者の生まれ変わりを探す旅に出たのです。

 話が大きすぎます。


 その八

「これ、一休」
「なんでしょう。和尚様」
「わしはこれから出かけるが、この壷を開けてはいかんぞ」
「どうしてですか?」
「この中身はな、猛毒なのじゃ。口にすればたちまち死んでしまうぞ」

「うわっ、大変だ!壺の中身を全て食べてしまった」
「こらっ一休!ワシの壺が空っぽではないか!」
「和尚様、余りにおいしいもので、ついつい…」
「お前は罰として壺の中に入っておれ!」
「うわーん、ごめんなさいー」

 壺はごめーん、と鳴り響いたそうな。

 …懐かしいな。


 その九

「これ、一休」
「なんでしょう。和尚様」
「わしはこれから出かけるが、この壷を開けてはいかんぞ」
「どうしてですか?」
「この中身はな、猛毒なのじゃ。口にすればたちまち死んでしまうぞ」

「うわっ、気が付いたらこの壺の中身を全て…!」
「こらっ一休!ワシの壺が空っぽではないか!」
「和尚様、すいません」
「お前は罰として一日中廊下で正座じゃ!」
「うわーん」

 それで結局、壺には何が入っていたのでしょうか?


 その十

「これ、一休」
「なんでしょう。和尚様」
「わしはこれから出かけるが、この壷を開けてはいかんぞ」
「どうしてですか?」
「この中身はな、猛毒なのじゃ。口にすればたちまち死んでしまうぞ」

「しかし、一体中身はなんだろう?開けてはいけないといわれたけれど、そう言われると気になってしまうな」
 ぱかっ
 もくもくもく…
『はっはっはっはー、ワタクシは壺の魔人。壺を開けてくれたお礼に何か願い事をみっつ叶えてあげましょう』
「よーし、じゃあこんなネタで10個を目指して作ってみたはいいものの、結局オチを作れなかった作者を消してしまえー」
『それが一つ目の願いですか。お安い御用…』





 いや、本当にオチはないよ。

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